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夏祭りを前にした、瀬戸 内の孤島刑部島に向かう連絡船の中で、探偵・金田一耕助は、父母を亡くしたという若い娘・五十子と知り合う。ひとりで島に向かう五十子には、何か訳があり そうだった。島が近づく頃、船は海に漂う男を救いあげる。虫の息の男は、「あの島は悪霊島だ、死んだ子供が生きている、鵺（ぬえ）の鳴く夜は気をつけ ろ・・・」と、船客の持っていたテープレコーダーのマイクにささやくと死んでしまった。それは、やがて島で次々に起こる惨劇の幕あけだったのだ。島に着く と、笠岡署から島に来ていた磯川警部が、金田一の姿を見て喜ぶ。昔この島に住んでいた下津井の産婆が、謎の手紙を残して殺された事件を調べているところ だった。島は、かつて平家の平刑部幸盛が住み着いた処で、その流れを汲む刑部一族がとりしきり、長老・刑部大膳が睨みをきかせている。刑部神社の神主守衛 も村長辰馬も一族、そして妖艶な美女巴は、大膳の死んだ兄の孫娘で大膳が守衛を婿にした。しかし、島にはもう一方に越智一族があった。二十二年前、その越 智家の青年・竜平と刑部の巴が愛し合って駆け落ちをはかり、竜平は半殺しにされて島を追われた。その竜平が、いま大金持ちになり逞しい事業家・越智竜平と なって島に乗り込んできた。さてそれから次々に殺人が・・・。